俳優の中村ゆりさんが直腸がんのため44歳の若さで亡くなり、この病気の怖さを改めて認識した方も多いと思います。 坂本龍一さん始め、直腸がんで命を落とした著名人も少なくありません。 消化器の内視鏡検査を専門にしている医師としては残念です。 直腸も含む大腸がんは、難治がんの膵臓(すいぞう)がんなどと異なり、早期発見のための検診方法が確立しています。 それなのに約1万6000人が命を落とし、女性のがん死では1位です。 直腸がんの落とし穴について考えてみます。 直腸は、大腸の最も肛門に近い1520センチの領域で、がんは粘膜に発生します。 直腸には痛覚がないため、初期は無症状で進みますが、大きくなると、便の通り道が狭くなり、血便が出たり、便が細くなったり、便秘と下痢を繰り返したりするようになります。 残便感が出ることもあります。 大腸がん検診では、便潜血反応検査が企業や自治体の検診として広く行われています。 がんになると、便とこすれて出血するので、微量であっても血液を見つけようという検査です。 この検査で陽性となれば、大腸の内部を観察する大腸内視鏡検査でがんやポリープがないか確かめます。 直腸がんの落とし穴のひとつは、肛門と近いため、出血を「痔(じ)だろう」と考えて、内視鏡検査を先延ばしにする人が非常に多いことです。 男性患者のFさん(68)は、若いころから痔があり、時々、肛門痛と下血がありました。 そのため便潜血反応検査は一度も提出したことがありませんでした。 夏はいつも便が硬くなり便秘傾向になっていたのですが、この夏、一段と排便がつらく、23日に1度しか排便できず、下血の量が増えてきたので、私のクリニックを受診されました。 肛門から3センチの直腸内の全周にがんとみられる隆起があり、検査をしようとしても細い内視鏡でさえ挿入できない状態だったので、「直腸がんによる腸閉塞(へいそく)」と診断し、総合病院の消化器外科を紹介しました。 「自己判断せず、もっと早く検査を受けていればよかった」と話していました。