むかしむかし、あるところに、大きな大きな墓場がありました。 ここにはたくさんの死んだ人の魂が眠っていて、どの魂もみんな、もう一度生き返りたいと思っていました。 ある日の事、一人のおばあさんが死んで、この墓場にほうむられました。 でも、おばあさんは、永い眠りにつこうとはしませんでした。 「ああ、生きたい。 生きたい」 おばあさんはそう言いながら土をかきわけて、お墓の中から上半身を出して来たのです。 ところが外はたいへんに寒かったので、おばあさんは上半身を出したままブルブルと震えました。 「ああ、寒い、寒い」 するとそこへ、一人の男の子が通りかかりました。 おばあさんは、男の子に言いました。 「坊や。 良い子だから、ここに火を持って来ておくれ。 この冷え切った体を、暖めるから。 体が暖まればここから出られるし、ここから出ればあたしは生き返られるんだ」 でも男の子は、首を横に振りました。 「坊や、お願いだから火を持って来ておくれよ」 おばあさんがいくら頼んでも、男の子はおびえたように首を横に振るだけです。 「ああ、こんなに寒くては、まだ地面の中にいた方がましだね」 寒さが我慢出来なくなったおばあさんは仕方なく、またお墓の中に入って行きました。 おばあさんはそれっきり、二度と外へは出て来ませんでした。 おしまい