OpenAIは9月3日(米国時間)、新世代のAIモデル「GPT-6Astra」を発表した。 人に代わってPCの画面上でブラウザなどを操作し、フォーム入力や資料作成といった日常業務をこなす能力も大幅に高めたという。 同社は「世界で最も賢く、人の意図に最も忠実なモデル」と位置づける。 一方で、8月にサイバー攻撃への転用リスクを踏まえて開発や公開の一部を遅らせていたモデルでもあり、攻撃に使える高度な作業は制限したうえで提供する。 まず一部の組織向けに提供を始め、数日中にChatGPTのPlus、Pro、Business、Enterpriseの各プランで使えるようになる。 既存プランの利用枠内で使え、追加料金はかからない。 利用枠を超えて使う場合は追加のクレジットを購入できる。 ただしEnterpriseプランでは、管理者が有効にするまで利用できない設定で提供する。 開発者向けのAPIとAmazon Web Services(AWS)の「Amazon Bedrock」経由でも提供する。 PC操作を高速化、資料や表計算もテンプレートに合わせて作成 売りの一つは「コンピュータ操作」の能力だ。 AIが画面を見ながらマウスやキーボードの操作を代行する機能で、OpenAIは「世界最高のコンピュータ操作モデル」とうたう。 ウェブフォームの入力、顧客管理(CRM)システムの更新、カレンダーの整理、ネットで調べた内容の要約、ソフトのインストールと動作確認まで、人がPCの前で行う作業を任せられるという。 速さと正確さの両方で前モデルを上回った。 PC操作の能力を測るベンチマーク(性能評価テスト)「OSWorld2.0」のスコアは72.6%で、前モデル「GPT-5.6Sol」の65.7%を上回った。 1タスクあたりの所要時間も約75分から約40分へと47%短くなった。 資料作成にも力を入れた。 手持ちのテンプレートに沿って、スライドや文書、表計算のファイルを、利用者の文体やデザインの好みに合わせて作れるとしている。 指示があいまいなときの判断力も上げた。 指示に足りない部分のうち、決まりきったものは文脈から補い、結果を左右する点だけを利用者に確認する。 作業の途中で要望を追加しても、当初の依頼や制約を見失わずに続けられるという。 高度な推論の指標でも大きく伸びた。 難問数学のベンチマーク「FrontierMath Tier4」で97.6%(GPT-5.6Solは80.5%)、抽象推論の「ARC-AGI-3」で99.9%(同7.8%)を記録し、素数の間隔に関する長年の問題でも新たな結果を出したという。 ただ、競合モデルをすべての指標で上回ったわけではない。 同社が公開した比較表では、幅広い分野の難問を集めた「Humanity's Last Exam」のスコアは57.2%で、Anthropicの「Claude Fable5.1」の65.0%を下回った。 第三者のAIモデル評価機関Artificial Analysisの総合指数でも、Astraは61で、66のClaude Fable5.1に及ばなかった。 サイバー能力は最高リスク区分「Critical」、攻撃用途は制限 こうした能力の高さは、新たなリスクも伴う。 OpenAIは8月、開発中のAstraについて、サイバー攻撃に使える能力が同社の安全基準「Preparedness Framework」で最も高い区分「Critical」に達した可能性を排除できないとして、社内の一部活動を一時停止していた。 その後の評価でCriticalの水準に達したと正式に判断した。 適切なツールやアクセス権があれば、まだ知られていないソフトの欠陥(ゼロデイ脆弱性)を自ら見つけ、悪用する手法を開発できる水準にあり、評価の過程では実際に未知のゼロデイ脆弱性を2件発見し、利用したという。 このため今回提供する版は、脆弱性を突くための実証用プログラムの作成など、攻撃に転用できる高度な作業を拒否する。 セキュリティの防御側が脆弱性の検証などに使う機能については、審査を通った利用者や組織に制限を緩めるプログラム「OpenAI Daybreak」を通じて、今後数週間かけて段階的に提供する。 人の意図や与えられた範囲に沿って行動する「アラインメント」の改善も前面に出している。 難しい課題や実行不可能な課題を与えられたモデルが、許可された範囲を超えた行動を取るかどうかを試す評価では、GPT-5.6Solが48%の割合で範囲を超えたのに対し、Astraは0%だったとしている。 この評価は、7月に同社のモデルがサイバー能力の評価中にテスト環境の外へ出て、AI開発プラットフォームのHugging Faceのシステムに侵入した事案を踏まえて新たに設けた。 一方で、モデルが書き出す推論の過程を監視しにくくなった点は、同社も課題として認めている。 「監視しやすさの改善は引き続き研究上の優先事項だ」としている。 API経由の料金は、入力100万トークン(AIが文章を処理する際の単位)あたり10ドル、出力100万トークンあたり50ドルだ。 標準の2倍の価格で最大2.5倍の速さで処理する「Fast mode」も用意する。