ネパールと中国の国境地帯で大規模な土石流が発生してから、2日で1週間となる。 死者は1000人を超えた。 巨大な氷河と岩盤の崩落が原因で、時速167キロ・メートルもの猛スピードで土石流が流れ下ったとみられる。 専門家は、崩落の背景に地球温暖化の影響を指摘する。 ネパール環境学会の報告書によると、現地時間の8月26日午前8時37分頃、標高5200メートル付近の斜面で、氷河を含む岩盤が1200メートル下まで崩れた。 マグニチュード(M)5・2の地震に相当するエネルギーが放出され、周囲の水やがれきを巻き込みながら大規模な土石流となった。 雪氷による災害に詳しい新潟大の河島克久教授は、崩れた岩盤の上に氷河があったことに着目。 「氷河が解けると、水が染みこんで岩盤がもろくなる。 風雨にさらされて風化していた可能性がある」と分析する。 崩落後、土砂との摩擦熱で氷河が解け、土石流の勢いは増していったとみられる。 土石流は時速167キロ・メートルに達し、約8分で約22キロ・メートル離れた国境検問所に到達した。 岩手大の井良沢道也名誉教授(砂防学)は「日本で被害が発生する土石流の510倍ほどの速度で、桁違いの規模だ」と話す。 崩落が起きたヒマラヤ山脈には大量の氷が存在する。 これまでも、地球温暖化によって氷河が解け、洪水が発生することが危惧されていた。 科学者らで作る国連「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は2019年の報告書で、温暖化によって高山の氷河などが解け、大規模な雪崩や洪水を連鎖的に引き起こすと予測した。 報告書の執筆に携わった国立極地研究所の榎本浩之特任教授(雪氷学)は「報告書を再現したかのような災害が起きてしまった。 今後も世界中の雪氷圏で危険な土砂災害が起こるだろう」と警鐘を鳴らす。 ネパールや中国など8か国でつくる「国際総合山岳開発センター」は今年3月、20年までの30年間で、ヒマラヤ地域の氷河が12%失われたとの分析を報告した。 特に00年以降は氷河の減少速度が2倍に速まっているという。 東京大の江守正多教授(気候科学)は「発展途上国は、温室効果ガスの排出量が少ないのに、その悪影響に対して脆弱(ぜいじゃく)だ。 日本を含む先進国が責任を持って気候変動対策を進めなければならない」と語る。