お福と鬼。 昔々、ある村にじい様とおばあ様と三人の娘が住んでいました。 ある秋の日、鬼が山から下りてきて畑を荒らすので、じいさまが「やめてくれ、やめてくれ」と言うと、鬼は「お前の娘を嫁にくれればやめてやる」と言いました。 じいさまは娘たちを呼んで「鬼の嫁になってくれ」と頼みました。 一番上の娘は「いや、鬼の嫁なんてとんでもない」と断りました。 番目の娘も「嫌です。 鬼に食われてしまう」と断りました。 一番下のお福は、じいさまが困っているのを見て、「私が行きます」と言いました。 鬼が迎えに来ると、お福は干した菜種を袂に忍ばせ、家を出ました。 そして、菜種を一粒ずつ落としながら鬼の後をついて行き、鬼の岩屋に着きました。 鬼は気立てがよく、まめまめしく働くお福を嫁にもらい、大喜びでした。 ある時、お福は鬼に聞きました。 「あなたはとても強いから、怖いことなんて何もないのでしょうね」。 すると鬼は「いやいや、俺はイワシの頭とヒイラギが怖い」と言いました。 お福がいなくなってから、じい様とおばあ様は遠い山を眺めて泣き暮らしていました。 やがて冬が過ぎ、春が来ると、お福が落とした菜種が一斉に黄色い花をつけました。 月のきれいなある晩、お福は鬼が眠り込んだ隙に逃げ出し、花を頼りに家に帰りました。 じい様とおばあ様、姉たちも喜んで、すぐにお福を家の中に匿いました。 そして、鬼が来ても中に入れないよう、戸口にイワシの頭とヒイラギを吊るしました。 間もなくすると鬼がやってきましたが、イワシの頭とヒイラギがあったので家には入れません。 それでも鬼は毎晩やって来ます。 ほとほと困り果てたじいさまは、鬼に炒った豆を投げつけて、「この豆が芽を出すまでは来るな」と言いました。 鬼はその豆に水をやって世話をしましたが、炒った豆からはいつまで経っても芽が出ません。 それでも毎年、菜の花が咲く頃、鬼はおふくに会いたくなって山を下りてきます。 じい様とおばあ様はその度に炒った豆をまいては、「鬼は外、福は内」と言って鬼を追い返しました。 それから村では、節分に炒った豆をまくようになったということです。