むかしむかし、ある家の主人が、毎日耳を押さえて困っていました。 それは、家の両隣が鍛冶屋(かじや)なので、朝から晩まで『カンカン、カンカン』とうるさかったからです。 「まったく、あの二軒の鍛冶屋がどこかへ引っこしてくれるなら、どんなごちそうでもしてやるんだがなあ」 主人が、ぐちをこぼしていると、それを耳にした両隣の鍛冶屋が、二人そろってやってきました。 「わたしたちは、今度引っ越す事にしました。 なんでも、引っ越せば、ごちそうをしてくださるそうで」 「それはありがたい。 いいですとも、もちろんごちそうしますよ。 それで、引っこしはいつですか?」 「はい。 明日にも、引っ越しましょう」 「それは素晴らしい!」 そこでさっそく、主人は二人の鍛冶屋に山の様なごちそうをしました。 さて、ごちそうがすんだ後、主人が二人の鍛冶屋に聞きました。 「して、どちらへ引っ越されるのですか?」 すると、二人の鍛冶屋は答えました。 「はい。 わたしはこの人の家へ引っ越します」 「そしてわたしが、反対側に引っ越します」 これでは、意味がありませんね。 おしまい