こちらは、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の火星探査機「Mars Express(マーズ・エクスプレス)」が2018年9月21日に取得したデータを使って作成された、火星の画像です。 中央右に写っているのは、アルシア山。 そこから左に向かって、一筋の白い雲が長く伸びているのがわかります。 ソルボンヌ大学のJorge Hernández-Bernal氏を筆頭とする研究チームは、この雲がどのようにして形成されるのかを調べた研究成果を発表しました。 研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「Nature Geoscience」に掲載されています。 この雲は「AMEC(※)」と呼ばれるもので、水の氷の粒でできています。 ESAによると、AMECはアルシア山がある火星の南半球における春から夏にかけての時期、山の風下に毎朝現れてはすぐに消えるというサイクルを数か月にわたって繰り返します。 その長さは、最大で1800kmにも達するといいます。 ※...Arsia Mons Elongated Cloudの略、日本語では「アルシア山狭長雲」など。 通常、雲は大気中に漂う微粒子が“種”となり、その表面に水蒸気がくっついて凝結することで生じるとされています。 火星では塵(ダスト)がその役割を担っていると考えられていますが、AMECの場合は事情が異なるようです。 研究チームによると、従来の考え方にもとづいた火星の気象モデルではAMECの再現が難しかったものの、“種”を必要とせずに氷の粒が直接形成される「均質核生成(均一核生成)」と呼ばれるプロセスをモデルに組み込んだところ、観測と完全には一致しない点もあるものの、AMECの特徴をうまく再現することができたといいます。 具体的には、AMECは以下のような仕組みで生じると考えられています。 まず、アルシア山を越えて流れる風に対して山体が強い波を引き起こすことで、湿った空気が数分間で数km持ち上げられます。 すると、気温が10分間で30度も低下し、相対湿度の急上昇によって水蒸気から氷の粒が直接生じることで、アルシア山の風下に長大なAMECが形成されるとみられています。 Hernández-Bernal氏によれば、均質核生成は理論上の現象だと考えられてきたといい、同氏はその様子を「窓ではなく部屋の真ん中に結露の水滴が現れるのに似ています」と表現しています。