警察車両や消防車、地方自治体の公用車に搭載されたカーナビゲーションシステムからも受信料を徴収すべきかーー。 この問題を巡り、全国の地方自治体とNHK(日本放送協会)の間で大きな波紋が広がっている。 7月29日に開催された定例記者会見において、NHKの井上樹彦会長は、全国知事会から突きつけられた現行の受信契約制度の抜本的な見直しを求める提言について言及し、今後の対応方針を明らかにした。 これまでの経緯、双方の主張、世論の動向まで事態の全貌を解説する。 この問題が特に注目されたのは、2025年2月以降のことだ。 地方自治体の現場において、公用車に搭載されているテレビ受信機能付きのカーナビや、ワンセグ機能を持つ携帯電話について、NHKが「受信機能を有している」として過去にさかのぼって受信料の支払いを求める事例が相次いだ。 自治体側は、これらの機器は公務遂行のために配備されたものであり、テレビ視聴目的ではないと主張したが、NHK側からの過去分請求により大きな混乱が生じた。 受信料契約には、一般家庭の「1世帯1契約」という世帯契約と、法人や自治体が対象となる「設置場所(部屋や自動車)ごと」に契約が必要となる事業所契約が存在する。 公用車を多数保有する自治体にとって、カーナビを搭載した車の台数分だけ契約が求められるのは財政的に負担となる。 事態を重く見た全国知事会は、2026年7月に大きく2つのポイントでNHKに要求を突きつけた。 1つ目は「契約単位の抜本的な見直し」だ。 庁舎などの「施設ごとに1契約」を基本とし、公用車等もその施設の一契約に含めるよう求めた。 2つ目は「緊急車両の受信料免除」だ。 犯罪捜査や人命救助など公共の安全を守るために使用される警察車両や消防車両等については、少なくとも受信料の免除対象とするよう提言した。 この要望に対し、NHKは7月16日に文書(ニュースリリース)を公表。 放送法第64条を根拠に「カーナビに放送を受信できる機能がある場合は、受信契約の対象となる」と原則を強調しつつも、「全国の自治体から届け出漏れが相次いだことを踏まえると、必要な手続きをご理解いただくための説明に行き届かなかった点があったと認識している」と周知不足を認めた。 さらに7月29日の定例会見で井上氏は、今後の対応について「事業所の契約単位の見直しや緊急車両等の取り扱いについては、現行制度との整合性や事業者間の公平性等を考慮しながら具体的な検討を進めていく」と述べた。 さらに「より納得性の高い受信料制度の在り方について、NHKに寄せられるさまざまな声に加えて、外部有識者の方のご意見やメディア環境、視聴形態の一層の多様化などを踏まえて、今後も不断の検討・検証を行っていく考えだ」と説明。 具体的な時期については「事業収支にも影響してくるので、次期中期経営計画を策定する中で検討を進めていきたいと考えている」と語り、秋ごろに予定される次期計画の策定に向け、外部有識者の意見も交えて議論を深める方針を示した。