こちらは、NASA(アメリカ航空宇宙局)の火星探査車「キュリオシティ(Curiosity)」が撮影した火星の表面。 まるでハチの巣のような多角形の模様が、あたり一面をびっしりと覆っているのがわかります。 NASAのJPL(ジェット推進研究所)によると、キュリオシティがこのような多角形の模様(ポリゴン)に出会ったのは今回が初めてではなく、これまでにも何度か撮影されてきました。 しかし、ここまで大規模なものは前例がないといいます。 この画像は、キュリオシティが火星で探査を開始してから49304931ソル(※)となる2026年6月19日20日にかけて「Mastcam」を使って撮影された、「Valle Grande」と呼ばれる谷の景色を収めた360度パノラマに写り込んでいます。 冒頭のクローズアップ画像に写っている模様は、ひとつひとつの幅が約510cm程度とされています。 ※...1ソル(Sol)=火星での1太陽日、約24時間40分。 パノラマ画像には、砂に覆われた高さ約6mの岩山の側面にも模様が回り込んでいる様子が写っています。 キュリオシティのミッションでプロジェクトサイエンティストを務めるJPLのAshwin Vasavada氏は、「キュリオシティの目を通してこれまで数々の魅力的な風景を見てきましたが、このポリゴンの海には息を呑みました」「形状と化学組成を注意深く測定しており、これらの地形が形成されたプロセスに関する手がかりが得られることを期待しています」とコメントしています。 JPLによると、過去に見つかった多角形模様の一部は、泥が乾燥する際に生じるひび割れとして形成されたことがわかっています。 ただ、今回撮影されたようなハチの巣状の模様には、寒暖差の繰り返しや、地層が埋没する過程で堆積物から水分が絞り出される圧縮作用といった、複数のプロセスが関与している可能性があるといいます。 キュリオシティは2012年8月にゲール・クレーターへ着陸して以来、硫黄の結晶、光り輝く隕石、さらにはRNAやDNAの前駆体とみられる有機分子など、火星がかつて生命を育み得る環境を備えていたことを示す発見を積み重ねてきました。 キュリオシティが2014年から登り続けている高さ約5kmのアイオリス山(シャープ山)の麓であるゲール・クレーター一帯には、数十億年前には湖や小川が存在していたと考えられています。 多角形模様の形状や化学組成のデータ分析が進めば、この不思議な模様がどのようなプロセスで形成されたのか、より具体的な手がかりが得られると期待されます。 火星の乾燥した大地に刻まれた広大な“ハチの巣模様”は、太古の水と気候の“記憶”を私たちに伝えてくれるかもしれません。