スマホ業界は夏商戦に突入した。 7月下旬から8月、9月にかけて大型商品が相次いで発表される見込みだが、それらを前にして、日本メーカーがなんとか踏ん張りを見せている。 昨今、メモリーの高騰や円安基調、さらにキャリアショップではグーグル・Pixelが攻勢を強めるなど日本メーカーには逆風が吹いている。 そんななか、なんとか逆境を乗り越えようと腐心しているのがシャープとFCNTだ。 “20万円超え”を見送ったシャープ シャープは7月9日に「AQUOS R11」を発売した。 標準、広角、望遠の3つのカメラを搭載し、ライカの監修も受けている。 CPUはSnapdragon8s Gen4を採用。 従来モデルよりもスペックアップしている。 シャープはこれまで、AQUOS senseシリーズを中心に、3万円程度の低価格なAQUOS wishシリーズで販売台数を稼いできた。 しかし、メモリーの高騰によって、AQUOS wishシリーズの展開は価格面で岐路に立たされている。 シャープの通信事業本部、中江優晃本部長は「メモリー価格の高騰や中東情勢によって原材料費が高騰しており、ローエンドがその影響を最も受ける。 我々がスマートフォンで提供する価値は、ハイエンドとミドルレンジを中心としてきたい。 wishは法人で活用いただいているが、これからはどちらかというとRやsenseに注力していく」と語る。 シャープでは高価格なproモデルも展開していたが、2026年度にproモデルの投入はないという。 中江氏は「外部環境が例年になく大きく変わっているなかで、今までと同じ考え方でproを出しても、お客さまに手に取って使っていただけるのか、という懸念がある」という。 AQUOS R9proは20万円を超える値段であった。 世の中のありとあらゆるものが値上げしていく中で、スマートフォンに20万円以上を払うことに抵抗を感じる人も増えつつある。 シャープとしては当面はラインナップを絞り、Rとsenseに集中していく考えのようだ。 低価格×コンパクトにこだわったFCNT 一方、低価格モデルにこだわったのはFCNTだ。 人気シリーズであるarrows We3を6月25日に発売した。 ここ数年、低価格なモデルはディスプレイが大画面化していく傾向があった。 実はこれは特に中国などで大画面のモデルがよく売れるということもあり、結果として、量産効果が見込め、大画面ディスプレイの調達コストが安くなるというのが背景にあった。 「画面が大きいと高くなる」のではなく、「画面が大きいと結果として安くなる」からこそ、低価格モデルの大画面化が進んだのだ。 そんななか、FCNTは日本ではコンパクトなモデルの方が需要はあると判断。 とはいえ、市場ではコンパクトなディスプレーは部材として流通しなくなりつつあるため、FCNTでは独自にパネルをディスプレーメーカーに発注。 6.1インチというディスプレーサイズの調達を実現した。 当然のことながら、メモリーに関してはかなり高騰していることもあり、全体の調達コストのなかでかなりの割合を占めることとなっている。 そこで、他の部材での調達コストを徹底的に見直したことで、メモリー高騰分を多少なりとも吸収することに成功したという。 結果、従来モデルの価格を維持することはできなかったが、SIMフリー、4GB+128GBモデルで4万6200円(一部家電量販店の場合)を実現。 一部・MVNOでは4万円程度、キャリアによっては2万2000円という値付けがされている。 想定以上に好評だった「arrows Alpha」 FCNTにおけるハイエンドモデルとなるarrows Alphaが昨年発売されたが、想定を上回るほど好評でよく売れたとされている。 本来は2年間、後継機種を出す予定はなかったようだが、急遽、「arros Alpha2」を出すことにしたという。 外観はフラットボディ、ベゼルレスデザインとなり高級感が増した。 カラー展開も2色から4色になるなど、選ぶ楽しさが増えた。 スペックを見ると、arrows Alpha2のCPUはMediaTek Dimensity8350で、arrows Alphaと変わらない。 実は、arrows Alpha2の基盤はarrows Alphaと同じものを使うことで、コストを削減しつつ、スピーディーに製品化が実現できたという。 ただ、外観に関しては、ほんの少しだけ、小さくなった一方で、堅牢性を増している。 arrows Alphaでは高さ1.5メートルからの落下試験をクリアしていたが、arrows Alpha2では1.8メートルから落下試験を通過。 また、水中でのカメラ撮影が可能になっているのが、ボタン部分などの防水性能を従来よりも高めることで、実現したという。 高いエネルギー密度を誇るシリコンカーボンバッテリーをFCNTで初めて採用など、最新のテクノロジーも取り入れている。 あえて高価格帯は避けて勝負に これから新製品が発表されるGalaxyやPixel、iPhoneなどは折りたたみやAIなど、従来のハイエンド路線で勝負を仕掛けてくることだろう。 一方、日本メーカーは高価格帯での真っ向勝負は避け、日本のユーザーの声を反映したものづくりで、存在感を発揮していくことになりそうだ。