なぜ子どもたちは不安やストレス、葛藤といった心の負担を、身体症状という形で表現するのでしょうか。 実は、子どもの心と身体の関係は、大人が考える以上に密接です。 発達段階の特徴や家族との関わり、学校という社会環境、そして現代ならではのデジタル社会の影響など、さまざまな要因が複雑に絡み合いながら症状として現れます。 今回のコラムでは、小児心身症の背景にある発症メカニズムについて、発達心理学や家族システム論、現代社会の視点から掘り下げていきます。 子どもたちがなぜ「心ではなく身体で語る」のか。 その理由を理解することは、症状の奥にある子どもからのメッセージに気付くための大切な第一歩となるでしょう。 子どもが心理的苦痛を身体症状として表現しやすいのには、発達心理学的な背景があります。 第一に、言語化能力がまだまだ発達途上であるということです。 大人であれば「人間関係でストレスを感じている」と言語化できる状況でも、子どもは「何となくもやもやする」「いやな感じ」といった曖昧な感覚としてしか体験できません。 この言語化できない情動体験が、身体感覚として意識に上ってくるのです。 ピアジェの認知発達理論によれば、抽象的思考が可能になる形式的操作期は1112歳ころから始まります。 それ以前の子どもたちは、心理的な概念を具体的な身体感覚として理解する傾向があります。 たとえば、「心が痛い」という比喩的表現が、子どもにとっては文字通り「胸が痛い」という身体感覚として体験されることもあるのです。 第二に、具体的思考から抽象的思考への移行期であるということも背景です。 小学生から中学生にかけては、具体的な思考から抽象的な思考へと認知発達が進む時期に当たります。 しかし、この移行は一様ではなく、心理的な問題を抽象的に理解することがまだ困難な子どもも多くいます。 その結果、「不安」や「緊張」といった抽象的な心理状態が、「おなかが痛い」「頭が痛い」という具体的な身体感覚として認識されやすくなるのです。