「抗がん剤が効く」というのは、どういうことでしょうか。 簡単そうに見えて、実は奥が深いこの質問について、掘り下げてみようと思います。 ※今回の回答は、血液がん以外の「固形がん」を想定しています。 抗がん剤治療など、がんに対する薬物療法を行うとき、「効いているかどうか」を見極めて、もし、「効いていない」と判断したときは、その治療を中止したり、別の治療に切り替えたりします。 では、「効いている」というのは、どういう状態でしょうか。 わかりやすいのは、「がんの大きさ」です。 CT検査などの画像検査で、がんの大きさを見て、がんが小さくなっていたら「効いている」、大きくなっていたら「効いていない」と判断します。 遠隔転移のある「進行がん」であれば、「がんの大きさ」を評価できますが、遠隔転移のない「早期がん」の手術後はどうでしょうか。 しこりは手術で取り除いていますので、画像検査をしても、病気の存在は確認できません。 それでも、がん細胞が血液中を漂っていたり、検査では確認できないミクロの病変が存在していたりする可能性があるため、再発を防ぐために、術後薬物療法を行います。 この状況で、効果を見極めるのは困難ですので、基本的に、「効果は確認せず、決められた治療をやりきる」という考え方で治療します。 過去の臨床試験で再発予防効果が証明されている治療法をきちんとやりきることで、再発の可能性を下げているわけですが、実際の効果は治療中にはわかりません。 がんを切除する前に行う術前薬物療法であれば、「がんの大きさ」の推移を見ることで効果を判断できます。 さらに、最初の診断時(薬物療法実施前)と、手術時(薬物療法実施後)の病理診断(病変の組織を顕微鏡で見て、がんの有無や状態を判断すること)の比較により、「病理学的な効果判定」ができます。 手術で摘出した病変に、がん細胞が全く残っていないという結果が得られることもあり、それを、「病理学的完全奏効(pCR)」と呼びます。 術前薬物療法では、このような効果判定ができ、その後の治療に役立てられるという利点があります。