スマートフォンのカメラは私たちが日常的に利用しているツールの1つだ。 静かなレストランや美術館、あるいはすやすやと眠る子どもやペットの愛らしい姿を撮影しようとした際、「カシャッ」という大きな電子音が鳴り響き、周囲の視線を浴びて気まずい思いをした経験はないだろうか。 現在、SNSの「X(旧Twitter)」を中心に、このスマホカメラのシャッター音を強制する自主規制の見直しを求める声が大きく広がっている。 世界的に見ても異質なこの仕様は、なぜ日本で定着し、そしてなぜ今、強く批判されているのだろうかーー。 そもそも、なぜ国内向けに販売されているスマートフォンの多くはシャッター音を消すことができないのだろうか。 この歴史は、2000年に発売された最初期のカメラ付き携帯電話「J-SH04」にまでさかのぼる。 当時から、携帯電話のような小型カメラによる盗撮行為を防ぐ目的で、シャッター音が鳴り、利用者がオフにできない仕様が採用されていた。 日本においてこのシャッター音の強制は、法令や都道府県条例による法的な規制ではない。 あくまで通信キャリアやメーカー間の自主規制として、20年以上にわたり慣例的に続いているものだ。 大手通信キャリア各社への聞き取り調査でも、共通して「盗撮抑止やプライバシー保護を目的に、シャッター音が鳴る設定にしている」「盗撮防止が目的のため、利用者による設定変更ができない仕様にしている」という回答があった。 各都道府県の迷惑防止条例に配慮する形で、業界全体がこの仕様を維持してきた側面が強いが、他国の事情は日本とは異なる。 スマートフォンのシャッター音はオフの設定にできる国や地域が大半で、シャッター音の強制仕様が具体的に規定されているのは、事実上日本と韓国の2カ国のみ。 つまり、日本市場のスマートフォンは世界標準から大きく外れたガラパゴス的な仕様ともいえる。 本誌(ITmedia Mobile)が過去に実施したアンケート調査によると、「スマートフォンのカメラのシャッター音は鳴らない方がいい」との回答が全体の75%を占め、「オフの設定が欲しいか」という問いには90%が「欲しい」と回答している。 実際に、飲食店での料理の撮影や、動物、子どもの寝顔の撮影など、日常生活のさまざまなシーンでシャッター音が周囲の迷惑になったり、被写体を驚かせてしまったりする実害が多数報告された。 SNS上でも、この仕様に対する不満が見られる。 「飲食店などでよく写真を撮影するが、特にトラブルになったことはない。 盗撮をしているわけではないし、周囲の環境を考えるとシャッター音はできるだけ小さい方が助かる」や、「自分はシャッター音を消したい派だ。 飲食店や静かな場所で大きな音が響くのは不快に感じる。 観光地なら仕方がないと思えるが、シャッター音を気にしない人はスマホの設定自体にあまり関心がないのだろう」「シャッター音の強制仕様はそろそろ廃止してほしい。 日本向けの端末だけこのような仕様になっているのは、あまり気持ちの良いものではない」といった実体験に基づく切実な声が多数上がっている。 多くのユーザーは、写真を撮るという正当な目的であるにもかかわらず、大きな電子音によってまるで悪いことをしているかのような視線を浴びてしまうことに、強い違和感を抱いているのだ。