ウサギとお猿姫。 わしらは食べとうないけんど、お月様にはあげたいな。 わしらは食べとうないけんど、お餅を一つあげたいな。 昔、ある満月の夜に、二匹のウサギが山の上で餅つきをしていました。 すると、そこへお姫様が現れて。 私はお月様の使い、お猿姫です。 私がそのお餅をお月様のところへ届けてあげましょう。 と言いました。 それはありがたい。 そうしてくれたら助かるな。 ウサギたちは喜んで、またせっせとお餅をつきました。 わしらは食べとうないけんど、お月様にはあげたいな。 わしらは食べとうないけんど、お餅を一つあげたいな。 そして、おいしそうなお餅ができました。 ところが。 よいしょ。 あれれ? よいしょ。 おかしいな。 ウサギたちはお月様に早くお餅を届けたくて、一生懸命餅つきをしたので、お餅が臼にくっついてなかなか取れません。 お猿姫はそれを見て。 ウサギさん、早くしてください。 早くしないとお餅が硬くなってしまいますよ。 困ったな。 どうしよう。 そうだ、私がこの臼ごと月まで持っていってあげましょう。 それはありがたい。 そうしてくれたら助かるな。 ウサギたちは餅を臼ごとお猿姫に渡しました。 お猿姫は臼を背負って山道を下りて行き、しばらく行くとくるりと振り返り、赤い舌をペロッと出して言いました。 やい、ころりと騙された。 あ、猿だ。 猿め。 餅が食べたくて嘘をついたんだな。 お月様の使いのお猿姫なんているもんか。 猿はそう言うと走って逃げ出しました。 よくも騙したな。 ひどい猿だ。 ウサギたちは怒ってぴょんぴょん跳ねて猿を追いかけました。 こらこら、待て待て。 お餅を返せ。 ところが猿は臼が重くてなかなか思うように走れません。 ウサギたちはあっという間に猿に追いつき。 えい。 捕まえた。 猿から臼と餅を取り返しました。 よくも騙したな。 ぷんと懲らしめてやろう。 せーの、えいっ。 ウサギたちは猿の背中を蹴飛ばしました。 猿はぽーんと隣の山まで飛んで行き、あちこちにお尻をぶつけながら、こんころこんころと山を転がり落ちました。 それで今でも猿のお尻は赤いのだそうです。