クマによる人身や農地への被害が相次いでいる。 クマとヒトの生活圏は本来であれば重なりがなく、世界の流れで見るとクマは減少傾向にある。 しかし、日本では珍しく個体数が増え続け、ヒトがクマに襲われるニュースが流れる。 いま、国内のクマはどのような生態なのだろうか。 最新のツキノワグマ・ヒグマのクマ研究から見えてきたのは、実際にはクマはヒトを避けるようにして暮らしている実態だった。 「一般的にクマは人間を避けて行動していました。 クマがヒトをエサにするなら、道路を避ける行動の説明が付きません」。 こう話すのは、東京農工大学でクマの生態を研究しているペク・スンユン特任助教(野生動物生態学)だ。 ペクさんは現在、銅山で知られる栃木県・旧足尾町(現・日光市)の国有林でツキノワグマにGPSを付けて個体の動きを観察している。 加工したドラム缶の中にハチミツを置き、クマが中に入り込むと板が落ちて安全に捕獲できるトラップを現在、6個設置している。 ドラム缶にクマが入るたび、麻酔をかけてGPS機能がついた首輪を付ける。 体重など大きさを測り、血液や毛などのサンプルを採って再び野に放つ。 こうしてモニタリングが可能になったクマについて、先行研究では道路を避けている様子が見られたものの、道路を横切らなければ移動できない場所にも行っていることが分かっていた。 このため、詳細な動線を調べることにした。 どのような「道」を歩いているのか、車の通行量が多めの主要道路・人間が通行するために使われる1車線の生活道路・限られた人間だけが通れるゲートが付いた狭い道の3種類に分け、周辺を含めたクマの出没頻度を調べた。 その結果、大まかには、3種類の道路に対して、クマはまず回避行動をとっていた。 人間を避けようとする習性のためだ。 しかし道路付近に出没あるいは横断したケースを細かく観察すると、オスとメス、季節や時間帯によって行動に違いがみられた。 観察の結果、クマが道路に接近しているのは主に夜間であることから、基本的にはクマは道路を通じて人間の存在を認識していることが分かる。