陣太郎兵衛と陣次郎兵衛昔、あるところに陣太郎兵衛と陣次郎兵衛という年寄りの兄弟がいました。 兄の陣太郎兵衛は欲張りで嫁にご飯を食べさせるのがもったいないと嫁を取らず、宝物をいっぱい貯めていました。 弟の陣次郎兵衛は毎日山で薪をとり、嫁と二人貧しい暮らしをしていました。 この村ではどの家にも鶏がいて、 夜明けの時を告げますが、 人次郎兵衛の家には鶏がいませんでした。 ある日、人次郎兵衛は市場で薪を売り、 そのお金で鶏を買おうと思いました。 けれども、 お金が足りません。 人次郎兵衛が夕方まで見ていると、鶏が一羽だけ売れ残りました。 鶏を売っている男は人次郎兵衛に言いました。 おじいさん、あんた鶏が欲しいんだろう。 ああ、だが金が足りないのだ。 それなら、この売れ残りをやろう。 いいや、ただでは貰えない。 足りないだろうが、このお金と換えてくれ。 陣次郎兵衛は薪を売ったお金で鶏を買いました。 陣次郎兵衛は鶏を懐に入れて家に向かいましたが、 途中で日が暮れてしまいました。 そこにちょうど大きな土地の木があったので、木の根元で眠ることにしました。 夜中になると、 がやがや、がやがや、声がするので、 人次郎兵衛は目をさましました。 すると、向うから鬼が松明をもって、 こちらへやって来ます。 人次郎兵衛は急いで土地の木にのぼりました。 鬼たちは木の下まで来ると、ゾコゾコッと盗んで来た宝物を出しました。 松明の光がガーッと宝物を照らし、辺りが明るくなると、なんと鶏がキッキロホー、キッキロホーと鳴いたではありませんか。 鬼たちは、「大変だ。 夜が明ける。」と言って、だーっと逃げて行きました。 やがて、本当に朝日が昇りました。 ジンジロベが木から降りると、そこには宝物がいっぱいあります。 陣次郎兵衛は宝物を背負って家に帰りました。 それからしばらくして、兄の陣太郎兵衛は、弟の陣次郎兵衛がこのごろ少しも働かないのはなぜだろうと思い、陣次郎兵衛の家へ行きました。 そして訳を聞くと、 陣次郎兵衛は土地の木で起こったことを話しました。 俺にもその鶏を貸せ。 いいや、貸されん。 もし鬼たちに見つかったら、どんなひどい目に遭わされるかわからない。 いいから貸せ。 陣太郎兵衛は懐に無理やり鶏を入れて出て行きました。 それからジンタロベは土地の木に登り、 鬼が来るのを待ちました。 夜中になると、松明を持った鬼が木の下に集まり、 宝物の山分けを始めました。 ところが松明の光で明るくなっても、 懐の鶏は鳴きません。 山分けが終わりそうになっても、泣きません。 慌てた陣太郎兵衛は、けっけろ、けっけろ、鶏のまねをして泣きました。 人間の声がする。 この木の上にいるようだ。 鬼たちがノコノコノコノコ登ってきます。 陣太郎兵衛はてっぺんまで逃げましたが、もうこれ以上は上がれません。 この間の晩、わしらの宝物を持って行ったのはお前だな。 違う違う。 許さん。 わしじゃない。 何を言っても鬼たちは聞き入れません。 陣太郎兵衛は鬼に捕まり、ずいぶんひどい目にあわされたんだと。