全部傑作じゃん......。 タモリ氏がストーリーテラーを務め、毎回豪華なキャスト陣を迎えながら、不思議な物語が紡がれる人気シリーズ『世にも奇妙な物語』の最新作が、『世にも奇妙な物語'26夏の特別編』として先日6月27日に放送されました。 独特な設定や風刺の効いたストーリー展開が印象的な当該シリーズですが、正直なところ、回によって当たり外れがありますよね。 私自身、幼少期から何度も見るくらい大好きなシリーズなのですが、最近は少し物足りない印象でした。 しかし、驚くべきことに、今回は全部当たり。 傑作ぞろいの最高の回で、今まで以上に風刺性が強まっている印象を受けました。 そこで今回は、大傑作だった『世にも奇妙な物語'26夏の特別編』の考察をしていきます。 『おじさんになりたい』のラストの意味にも触れますので、ぜひご覧ください。 今回の『世にも奇妙な物語』を見て、私がいの一番に感じたのは「これって日常系じゃん」という感覚でした。 何を言っているんだ......と呆れられたかもしれませんが、もちろん劇中の出来事自体は突飛な事だし、絵空事の類です。 しかしそこに描かれている問題意識は、現実世界と地続きのものであるし、まったく他人事とは思えないものばかりでした。 母親をネットオークションで落札する『マザーズオークション』では、人間がスペック化され、数値化されて、モノ化される様が描かれており、『遺体は一体......』では公的機関の隠蔽や、蔓延するフェイク情報の問題意識も読み取れます。 『実家じまい』では、齊藤彩氏の『母という呪縛娘という牢獄』や、三宅香帆氏の『娘が母を殺すには?』 などで昨今関心が持たれている「母娘問題」を中心に、高齢者の孤独ないし棄民問題などが取り上げられています。 そして『おじさんになりたい』で描かれる、家庭内暴力と地域の不在、繊細な子供たちなど......。 突飛な設定を取り払えば、そこに描写されている内容は、いずれも私たちが住む現代社会の姿そのものです。 どの話も設定の説明なしに、すっと理解できてしまうのは、我々の日常風景だからではないでしょうか。 あまりに違和感が無さ過ぎて、私なんかは、逆に怖いなと感じるくらいでした。 ネット上で人がモノ化され、陳列されている姿は、SNSやマッチングアプリで日々目撃している人も多いことでしょう。 捜査機関や報道機関、政治とカネ、芸能界の闇など、2020年以降、昭和から力を持つ権威、既得権益が不正を働いているという事実が次々と暴かれていき、公的なものへの不信感が強まっている時代。 『遺体は一体......』の隠ぺい工作を見ても、まあ、そういうこともあるだろうな程度に、すっと納得してしまうところがありました。 『実家じまい』と『おじさんになりたい』では核家族化による、密室のコミュニケーションで息が詰まり、家族が瓦解していく様子が見て取れます。 『実家じまい』における、高齢者と若者の世代間対立など、いずれのテーマも全て現実的。 実は奇妙な話ではなく、そこにあるのは私たちの実生活であり、隣近所で起こっているドキュメンタリーであると......そんな風に私には見えました。 ゆえに今回の作品群は“日常系”だなというのが、私のやや奇妙な感想になります。