アリスが野原を走っていくと、運良く白ウサギに追いつきました。 ウサギは生けがきの下にある、大きなウサギの穴にピョンと飛び込みました。 「ああっ。 ウサギさん、待ってー!」 アリスもそのまま、ウサギの穴に飛び込みました。 どうやってその穴から出て来られるかなんて、アリスはまったく考えていません。 ウサギの穴は深い井戸のようで、アリスはどんどん落ちていきました。 もう、止まろうにも止まりません。 でも大丈夫、アリスの青いスカートがパラシュートのように開いて、ゆっくりゆっくり落ちて行くのだから。 「こんなにゆっくり落ちるのなら、2階から飛び降りても大丈夫ね。 それにしても、どこまで続くのかしら? ウサギのお家がこんなに深いなんて、知らなかったわ。 わたしの家が、こんな家じゃなくてよかった」 アリスがこんな事を考えていると、やがて穴の中が明るくなってきました。 周りを見ると、かべには戸だなや本だなが、びっしりはめ込んであります。 本だなの本は難しい本ばかりですが、その中にお姉さんが読んでいた歴史の本もありました。 「お姉さんも、このウサギのお家に来たのかな?」 アリスは下へ落ちながら、途中の戸だなからビンを1つ取りました。 そのビンには《オレンジ・マーマレード》と、レッテルがはってありました。 「わあ、オレンジマーマレードだ」 オレンジマーマレードは、大好物です。 でも空っぽだったので、アリスはがっかりです。 アリスはそのまま下へ下へ下ヘと、どこまで落ちて行きました。 一体、どこまで落ちて行くのでしょうか? 「もう、何キロぐらい落ちたかしら? こんなに長く落ちたのだから、きっと地球の中心あたりまで来てるに違いないわ。 えーと、地球の中心だから、6400キロぐらい落ちたかしら」 地球の中心までの距離は、アリスが学校で習ったばかりです。 アリスは自分の物知りぶりを得意そうに披露しましたが、今は誰も聞いていないので張り合いがありません。 でも何度も復習をするのは、いい勉強になります。 「今が地球の中心だとすると、緯度と経度はどのくらいかしら?」 本当の事を言うと、アリスは緯度や経度の意味をよく知りません。 何となくえらそうな言葉だったので、言っただけです。 アリスのおしゃべりは、まだ続きます。 「このまま落ちていったら、そのうち地球を突き抜けてしまうんじゃないかしら? 地球のうら側にいる人たちなら、きっと逆立ちをして歩いているから、わたしも逆立ちの練習をしなくっちゃ」 アリスの知識も、この程度です。 周りに聞いている人がいなくて、よかったですね。 「そうだわ。 今夜はあたしがいなくて、ダイナがさびしがるかも」 ダイナというのは、アリスが可愛がっているネコのことです。 「ダイナも、あたしと一緒に落ちていたらいいのに。 ああでも、空中ではネズミがいないかもしれないわね。 だけど空中なら、コウモリがいるかも。 コウモリとネズミによくにているけど、ネコはコウモリを食べるかしら?」 長い時間落ちていたので、アリスはそろそろ眠くなってきました。 そして夢でも見ているような気持ちで、おしゃべりを続けました。 「ネコは、コウモリを食べるのかしら? ネズミとコウモリはにているから、きっとコウモリはネコを食べるわね。 ・・・あれ? あたし今、ネコとコウモリをまちがえたかしら? それにしても、なんだかとってもねむたいわ」 アリスは目をつぶると、夢の中に現れたダイナにたずねました。 「ねえ、ダイナ。 あなた、コウモリを食べたことがあるの?」 その時、いきなり、 ドスン! と、アリスは枯れ葉の山の上にぶつかりました。 ようやく落ちるのが、終わったのです。